第１４５回例会　（２０１２年　２月）　

　新宿昭和裏物語ー昭和初期の新宿を舞台とした話。

　デパート建設のために立ち退きを強いられている一廓。二階のビリヤード場の旭亭と階下の酒場が舞台。

ビリヤード場の主人（彦六）は三多摩自由党の生き残りで、立ち退くまいと申し合わせたこの一廓の代表である。
　しかし今では、階下の酒場とこのビリヤード場だけがのこり、後の店はわずかな金を掴まされ立ち退き、この一廓は廃墟のようである。それでもここの主人はわざわざ寝込んで、ここに居座っている。ここではダンサーで娘の千代（ミル）と彦六の後妻気取りのお辻の三人で暮らしている。階下の酒場の主人（井伏鉄造）は彦六をお辻と共に何とか説得しようとしている。二人はそれぞれ彦六に世話になり、身内のような関係ではあるが、立退きを迫る土地ブローカーの白木軍八郎と通じているようなのである。
　彦六には娘（千代）の他に、彦一という息子がいる。しかし彦一は母親が亡くなると、無茶をするようになり人を斬ってこの土地を売ってしまったのである。深夜の都会の盛り場の灯りが窓から見える、二階のビリヤード場から幕を上げて、階下の酒場、そして再びビリヤード場で幕を下ろす、三幕、一夜の芝居である。

原作　：　三好十郎
演出　：　米倉斉加年
出演　：　米倉斉加年、助川　汎、山梨光國、上野日呂登、尾鼻　隆、山本　勝、守田菜生、溝口貴子、青山恵子


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